著者の栗原哲さんは現在はあまり外出しないようだが、以前は私が所属している「那須シニアネット」の仲間でパソコンを通して交流をしていた人であった。
自宅でパソコンの操作で異常が出て文字が打てなくなったり、漢字変換が出来なくなった時などに奥さんから私に連絡があり栗原さん宅に訪問して修復や操作のアドバイスをしていた。
昨年末に偶然に日航機事故で栗原さんが家族を亡くしている話が伝わって来た。それまでいちども当人からも奥さんからも全く日航機事故の話はしなかったので迂闊にも最近まで知らなかったのである、事故のことを知った後もお互いこの話はまったく話題にはしなかった。
栗原さんは寡黙の人である、必要以外の話はしない。奥さんは自身のボランティア活動に熱心でこの方もおしゃべりは嫌いである。
自宅は昔からの家で夫婦がつましく暮しながらネパール支援や地域の市民活動やボランティア活動をしていることに敬意と好感を持って接して来たのだった。
ところが先日、栗原哲さんが「愚直」という本を出版したとNHKのローカルニュースで知った。さっそくアマゾンで取り寄せて読んだ。
出征、抑留、復員し校長で定年後にようやく見えた平穏の日々から
長男一家が乗る日航機墜落の報せ。慟哭の手記には怒りと深い悲しみ
が伝わってきた。事故後の裁判では「地獄を見ないものが地獄を裁く」という言葉に胸に迫った。
日航機墜落事故は生まれ故郷の近くで起こった不幸な出来事だったので当日のTVニュースは連日観ていたがそれでも傍観者の一人であった。身近なところに犠牲者の家族がいたとは思っても見なかった。
私の韓国との往復は全て日航機を使っている、既に毎年2~30回は利用して来た。経営破綻した前も後も乗務員は一生懸命に働いてる姿を見るにつけ頑張ってくださいと声を掛けた事もあった。
日本航空の完全復活を望んでいた身としては一時複雑な心境になったが過去の事として日本航空には事故を忘れずに安全運航につとめてもらいたい。
今年、温かくなったら御巣鷹山慰霊登山へ行ってこうようかと思っている。
著者 : 栗原哲
出版社: 新潮社
発売日: 2016年01月
ISBN978-4-10-910062-5
定価 : 1900円+税