入院中に「心淋し川」を読んだ感想

直木賞受賞作の心淋し川(うらさびしがわ)を検査入院中に読んだ。

この心淋し川の両岸に並ぶ長屋には、それぞれ複雑な事情を抱えながらも毎日を精一杯生きている人たちが住んでいる。

長屋の住人たちを主人公に据えた江戸時代の庶民の人情が味わえる作品だった。中でも「はじめましょ」が印象に残った。

飯屋を営む与吾蔵は、根津権現で小さな女の子の唄を耳にする。かって手ひどく捨てた女が口にしていた珍しい唄だった。

もしや己の子ではと声をかける・・子供と大人の女と男、3人がそれぞれ不幸な過去を持って一生懸命に生きている。

貧しい人々の切ない話だが、希望に満ちた終わり方で、子供の幸せが来そうで良かった。

作者は40歳代の西條奈加氏、初めてこの人の作品を読んだが人情噺が上手い作者と思った。