文藝秋春2月号の藤原正彦氏の「古風堂々」というコラムに「茨木のり子の詩」の「さくら」がほんの少し紹介されていた。
「……さくらふぶきの下を ふららと歩けば
一瞬 名僧のごとくにわかるのです
死こそ常態 生はいとしき応気楼と」
なんと衝撃的な言葉なんだろうと思った、その後に「茨木のり子詩集」を取寄せて時々読んでいる。この詩人の言葉に、凛とした人の姿を重ねて読んだのが「倚りかからず」の詩である。
薄っぺらな人生を歩んでいる私には茨木のり子の詩から大きな刺激を受けている。一度だけの人生いつも確固たる生き方をしたいものだ。
倚りかからず (73歳の作品)
もはや
できあいの思想には倚りかかりたくない
もはや
できあいの宗教には倚りかかりたくない
もはや
できあいの学問には倚りかかりたくない
もはや
いかなる権威にも倚りかかりたくはない
ながく生きて
心底学んだのはそれぐらい
じぶんの耳目
じぶんの二本足のみで立っていて
なに不都合のことやある
倚りかかるとすれば
それは
椅子の背もたれだけ