日本でのタイトルは「パラサイト 半地下の家族」だが、韓国では「기생충(キセンチュン)」寄生虫でもっとわかりやすいタイトルになっている。
アカデミー賞で作品賞、監督賞、脚本賞、国際長編映画賞の最多4部門を受賞した作品である。これはアジアでは初めてらしい。
作品内容は一言で言って格差社会の戦争を描いているようだった。
豪邸に住む富裕層と半地下の家に住む貧困層の格差について描いているが、さらにその下にも貧困層がいたのだった。
日本ではあまり馴染みのない、「半地下」で4人で暮らす家族全員が働ける年齢ではあるもののまともな職につくことができず、内職をこなしなんとか生活をしている。
長男は大学受験に失敗し続け、妹は美大に行きたいが予備校に通うお金がない。一家は半地下で暮らしていて窓が開いていれば外の道路を消毒している消毒剤が家の中に入ってくる。Wi-Fiは不安定、電波も悪い、水圧の関係でトイレは家の一番上にある。
4人でぎゅうぎゅうに座るリビング、ゴキブリ、外は常に喧騒でまさにギリギリで生きている状態を描き出す。
それに比べ、舞台となる豪邸は有名建築家が立てた美しい家、IT企業の社長である夫、人を疑うことを知らない優しい妻、可愛い娘、才能がある息子と絵に描いたような幸せな一家が住んでいる。
ひょんなことから、長男はこの家庭の娘の家庭教師、母が家政婦、妹は絵の先生、親父は運転手に身分を偽り豪邸に就職して入り込んだことから悲喜劇が起こる。
豪邸の地下にはなんと元家政婦の旦那が住んでいたのだ。主人公になっている一家以外にも「寄生」していた家族がいた、貧困家庭の下にはまだ下がいたのだ。
お互い寄生者の家族同士で争いが勃発して悲劇が起こり元家政婦の命を奪うきっかけを作ってしまった。
この争いが幸せに暮らしていた家族のパーティーで衝撃の結末につながってしまう、貧乏人はお金持ちに対していつかは恨みの感情をもってしまうのか?
貧困者の匂いに顔をしかめた社長を殺してしまう、この描写は見ていて辛い。別の表現があるのではとも思ったが韓国人らしい。
ポン・ジュノ監督は格差の拡大が社会に悲劇的な結果になるかもしれないと警告している。
金持ちはより金持ちに、貧乏人はより貧乏になるのは資本主義社会の必然性なのか、現実はどこの国にも起る現象だが・・・格差の解消は日本でも取り組まないと大変なことになるかもと思うと疲れてしまった。
20年間の韓国滞在中では社会の一部かもしれないが内職をしている半地下部屋にも行った事もあるし、オーナーの住む庭付きの家庭、給与の殆どを子供の教育費に使う家庭、年金が無い老人家庭など、いろいろ思い出した映画でもあった。