今年の5月に高野山へのひとり旅の帰りに「司馬遼太郎記念館」を訪問した。
55歳で心臓バイパス手術で失意の底にあった時にベットの上で読んだ小説で自分の考え、行動、将来への生き方などで心が揺り起こされエネルギーを与えてくれたのが司馬遼太郎の作品だった。
「坂の上の雲」「竜馬がゆく」「街道をゆく」シリーズや「菜の花の沖」「故郷忘じがたく候」など私にも大きな財産を残していってくれた偉大な作家であった。
記念館訪問の記念として買って来たのが「21世紀に生きる君たちへ」と題する司馬氏の随筆であった。
この随筆は小学生の為に書かれたようだが、本日また読んでみて深く感じるものがあった。
司馬氏は1996年に他界したから21世紀を知らない。21世紀になった現在の日本は科学や技術の進歩する中で人々が物質の豊かさを求める一方で自然環境を破壊し、人の心が貧しくなってしまっているように思う。
「田中君、ちょっとうかがいますが、あなたが今歩いている21世紀とは、どんな世の中でしょう」
そのように質問して、君たちに教えてもらいたいのだが、ただ残念にも、その「未来」という町角には、私はもういない。
同書のこの箇所を読んで、私はハッとせざるを得ませんでした。
いまこの問いを投げかけられたときに、自信をもって21世紀を肯定することが出来るのだろうかと・・・。
よりよい21世紀を築けるのか、同書は非常に有用な示唆も残してくれている。
いつの時代、世界のどこにあっても不変の真理であるとして、以下の2点の重要性を論じている。
1、自然を敬い、自然へのすなおな態度を取り戻すこと、この態度こそ21世紀への希望であり、期待である。
2、「自分に厳しく相手にやさしく」という自己を確立し、いたわりの気持ちをもって助け合うこと。
自然と共存できているか?自分に厳しく他人に優しく接しているか?利を求めすぎていないか?
「洪庵のたいまつ」で述べられている洪庵の生き方と合わせて自分に投げかけてみると反省することばかりで情けない。