信州の鎌倉・塩田平ひとり旅(1)

上田市の西南に広がる塩田平一帯は、鎌倉幕府の重職であった北条義政から三代に渡り約六十年、塩田北条氏が信濃の一大勢力としてこの地方を統治したことから「信州の鎌倉」と呼ばれている。

鎌倉幕府の本拠地であった鎌倉は1333年新田義貞による鎌倉攻めで焦土と化してしまったが、ここ塩田平は美しい山や田園など風光明媚な中に鎌倉時代から室町時代にかけて造られた神社仏閣など、数多くの文化財が残っている。

上田市発行の塩田平ウォーキングマップでは「散策モデルコース」として距離10kmで所用時間は5~6時間となっている。平地とはいえ真夏の時期に日中歩くのは大変だろうとは思っていたが当日は気温も気温も30度以上になり山歩きの時のような涼しい風もなく汗だくで大変厳しい「信州の鎌倉」ウォーキングであった。

上田電鉄の塩田駅で降りて最初の目的地は「無言館」である、だらだらとした緩い坂道を40分ぐらい歩くとは山林の中に無言館があった。

無言館の入口は木製扉が有るだけで窓口も無い扉を押して中に入ると薄暗い中に作品が浮びあがった。第二次世界大戦で志半ばで戦死した画学生たちの遺作やイーゼルなどの愛用品が展示されていた。
20代の才能ある若い人達がもっと沢山の絵を描きたかったのにその希望が戦争という悲しい出来事で絶たれてしまったことを物語っていた。
作品は何も言わないが見ている人に夢を絶たれた悲しみの声が伝わってくるようだった。
http://www.dankami.net/mugon.htm

無言館

無言館


ここから
近くにある前山寺を訪ねたが少し歩くだけで汗がダラダラと出た。寺名は「ぜんさんじ」と読むらしいがこの塔には窓や扉、廻縁、勾欄が無いから未完であるので「未完成の完成の塔」と呼ばれている国の重要文化財の三重塔が有名である。確かに立派な完成された美しい三重塔である。

前山寺の三重の塔

前山寺の三重の塔

前山寺から「あじさいの小道」という名の遊歩道を通って、塩田城跡を経由して
歩いて行くが紫陽花の花は既にほとんどなくさびしい道を行くと龍光院の山門に到着した。

龍光院

龍光院

黒門の左手前には「山門禁葷酒」の文字があった、スマホで検索したら「葷」(くん)と呼ばれる臭いの強い野菜や酒は修行の妨げになるので、寺の中に持ち込んではならないとい意味で禅寺にはよくあるようだ。

山門からは石段を上がって行くがこれがとにかく長かった。ここでも汗が・・・
本堂にお参りして戻りさらに、遊歩道を進むとため池があり独鈷山から流れる塩野川の水を貯めている池で全国ため池百選に選定されている塩野池と言う名前の池だった。

塩野池

塩野池


池の近くには「塩田の館」と表示されている看板があり、蕎麦などが食べられるようだが、食欲もないのでパスして通り過ぎた。次に訪れたのは「塩野神社」であった。
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少し荒れた感じがしたが杉林の中に立つ拝殿は江戸時代に建立されたもので、2階建ての楼門造。拝殿の前にかかっている橋は、太鼓の一部のような曲線を帯びているため「太鼓橋」の名が付いている。
戦国時代には、武田信玄や真田昌幸・信之が信仰を寄せていたと説明文があった。

塩野神社を出てすぐ隣に有るのが「中禅寺」である。入り口のところにあった休憩所から声がかかった2名の先客と入れ違いに椅子に座ったらすぐに冷たい蕎麦茶を振舞ってくれた。これがまたおいしかった!

中禅寺薬師堂

中禅寺薬師堂

この「中禅寺」の背景には独鈷〔とっこ〕山が迫っていてその麓にある。
木立にかこまれた静かなたたずまいの中に信州最古の茅葺き屋根の木造建築の
中禅寺薬師堂(重要文化財)が建っていた。
堂内には、薬師如来座像(重要文化財)と手なし神将像が安置されている。
薬師如来座像は鎌倉初期の作と伝えられ、穏やかで整った優美な仏像だった。