2004年5月

韓国の主流が変わりつつあるようです。政治、経済、社会、文化のあらゆる分野で、20代と30代が40代と50代を押しのけ浮上しつつある。 この世代はサッカー・ワールドカップで「テ〜ハンミングック(大韓民国)」を叫び全国をレッドデビルのシャツで赤く染めたり、「参加の政府」を掲げる盧武鉉(ノ ムヒョン)大統領を選出し、今年の国会議員選挙では与党のウリ党が過半数を制する原動力になった中心勢力です・・このため新旧世代の交代時に起こる混乱が生じているのも最近の韓国事情です。

政治の混乱、製造業の空洞化、労使関係の不安定さ、消費の減退などを乗り越えてかっての成長路線に戻れるであろうか今年の大きな課題です。


[○月○日(工場長の退社と入社)]

 

2年前に新しく入社した工場長(56歳)はオーナーの古い友人で自身の会社が倒産したためオーナーの指示で入社した経緯があります。中小企業でも会社の経営を経験した人であるから期待したのですが残念ながら部下に対する信頼が得られず本人も悩んでいたようでした。

性格は温和で知識もあるので私もいろいろ指導してきたつもりですが・・成果も上がらず部下からの反発も続き遂にはオーナーまでその話が伝わりまして、解任すべきではないかという事になりました。日本でも中小企業は社長の考えでどのようにも人事は出来ますから同じといえば同じですがただ違う点は外部から採用して成果がなければ短期間でも首にします、その後新たな人材が居るのか心配になりますが・・それが代わりがすぐに入社します。

オーナーが当人とどのように話をしたのか解りませんが話合いにより一ヶ月後に退社でした。工場長は理事待遇ですから専用車が支給されていますが退社と共に返却となります。

その直後に競争相手の会社で工場長を担当していた人が入社しました、話によると以前の会社では自宅から遠く単身赴任であり1年間勤務したが家族の反対もあり退職したそうです。その直後に弊社から勧誘の話があり合意したようです。競争相手会社との関係がどうなるか心配でしたが結果的にはお互い協力して大企業に対抗して行こうという話しが進んでいますからこれも不思議なことです。

退社した元工場長が最近挨拶に来ました・・・何処に勤務したのか聞くとプレス部品製作の会社に就職しているとのこと、これからも頑張るので是非勤務した会社に来てくださいと明るく話をして帰りました。

日本ですと何か後ろめたくなるような現実がここではすべて明るく前向きであり挑戦する意気込みが伝わってきます。この割り切り方と全てに前向きな姿勢は見習うべきことでもあります。

[11日○日(生産革新運動)]

 

今日は以前から決まっていた生産革新の改善フォローアップ会議です。午後2時の約束時間に会議室に行きましたが誰も居ません。会議室で待つこと10分過ぎても誰も来ません。15分過ぎたら技術・生産部長と工場長がが来たが資材部長がまだです・・。今日は資材調達のカンバン化がテーマですから是非出席してもらわないと困るので、探させたが外出しているとの事、電話させたら急用が出来たので課長を出席させると言ってきました。

朝確認した時は全員出席すると話を聞いたがなぜ時間通り集まらないのでしょう?急用が出来たならなぜ事前に連絡できないのはどうして?こんな状態だから生産革新などできる訳がないのだ!と腹立たしいがまあ気長に・・気長に・・教育し理解させる以外ないかなあ・・と思いました。
言葉の壁は大きい・・・なぜ改善が進まないか悩む


カンバン方式でよくなった事、悪くなった事を書き出させたが、中身を見てまあ良い方向に向かっているのではないかと一安心しました。
◆良くなったこと
  1. 倉庫スルーで直接ラインサイドストアーに入るので手間が架らない。
  2. 仕分け、倉庫への格納が無くなった。
  3. 倉庫スペースが削減出来た。
  4. 生産の進度が解る
  5. 目で見て在庫が解る
  6. 外注の社長が品質について注意するようになった。
  7. 納期督促が無くなった。
◆悪くなった事
  1. カンバン枚数のメンテに手間がかかる。
  2. 品質トラブルのフォローする時間が無くなった。
  3. 欠品により製造遅れが発生する。
  4. トラブルにより工程の入れ替え、残業が発生する。


カンバン方式の説明風景・理解は早いが実行がなぜか遅い

[○月○日(新商品企画)]

 

新事業の一つで病院用のベットに付属させてビデオ・DVD・インターネットなどを提供できる機器を開発し病院に無償で提供し「コンテンツ事業」としての企業企画を考えているらしい・・?オーナーの指示で日本から技術者を探して欲しいとの依頼あり、いろいろ調査して適当な人が見つかり交渉して韓国に招待しました。

この技術者と一緒に韓国で有名なサムソン病院に行き、新事業について意見を聞きました。解ったことは韓国の300床以上の大病院での平均在院日数は約7日でありTVなどは別の場所で見てもらっている、病室でTVなど見られるようなら退院させる。したがってこのような機器は韓国では必要ないという話でした。

日本から来た技術者はなんでこんな簡単なことが解らなくて新規事業の企画をするのかわからん・・といって帰国しました。その後この新商品の話はなくなりましたがオーナーは新規事業のフイジビリスタデイであるからこのようなこともあるよ、といってあまり気にしていません。結局オーナーの思いつき企画であって部下を含めた自由な議論が全く無かったことが後で解ったが、私の立場は何だったのか何をやったのか・・むなしい感じだけが残りました。

サムソン病院(1300床・4500名)に行き聞いた話しで興味があったのは在院日数の話でした。

 

韓国での病院とはベットが30床以上を言い、全国で1080箇所あります、30床以下は医院といい2500ヶ所あるそうです。(日本の病院は8500ヶ所)韓国の病院での在院日数は約7日だそうです、出産時の入院日数は2泊3日が普通ですこれに対し日本は一週間ぐらい入院したような気がします。日本の平均在院日数は約20日だそうでこれを16日ぐらいにしようとしていると聞きました。

米国の在院日数は4日だそうですから韓国も米国も病院では高度な手術が主体でテレビなど見られるようになったらすぐに退院させるのが普通です。入院が長くなれば経営が悪化するような仕組みのようです。

上記が事実とすれば日本の医療は術後も十分養生させようとしているので医療費負担では保険財政を圧迫しているのかもしれません。


[○月○日(他人の褌で相撲取るな)]
 

技術室で大型商品のユニットの接触不良を検討していた、スプレングが弱いのかもしれませんと説明があった・・・私が図面はどうなっているのか図面を出すように指示したら・・

「図面はありません、」

「なぜ?」

「この部品はこ購買品で他社の商品を応用していますから・・」

駄目だよ、メーカーである以上商品の基本的な部分は至急図面化しなさいと指示しました。韓国の中小企業では他社が開発した部品やユニット化したものを外注先から無断で購入し利用するケースを時々見受けます。資金がない小企業の現場での助け合いと思えばよいのですが明らかに商道徳に反する事である、こんな安易なことをやっていては競争に勝てません今後は止めさせたいと思っています。

私の知っている範囲での印象ですが・・このようなメーカーが多く、韓国の中小企業の技術力向上のためにはこのような安易な商品開発を抵抗感なく実行する企業文化を排除することは長い目でみるとプラスです。



図面が無くてなんで良否が解るのか!!。

[○月○日(ウッカリミス)]
 

この一ヶ月の間にウッカリミスが多くなり参りました、春になり気持ちの弛みかまたは・・いよいよボケの始まりかと心配になりました。

一度目は韓国のインチョンに向かう成田空港の飛行機内で起こりました。飛行機に乗り込み指定の座席に座り新聞を読んでいたときです、横に若い男が来て座席がダブっていると言いまして乗務員を呼びました。JALの乗務員が私のチケットを見て

「お客様、この飛行機はグァム行きです!!何処から入りましたか!!」
「エー グァム行きですか? 何処からといったって・・窓から入れる訳ないでしょうーー(@_@;)」
慌てて降りましたが・・・なんとなくゲートでチケットを渡し、JAJの従業員も確認せず通過させた模様でした。その日のビジネスクラスの席は空いてましたからその若い男が来なければ私は確実にグァムに行っていました。

二度目は中国の上海に行った時にホテルにチェクインしようとしたら予約が有りません、と言うではありませんか。
そんなことない筈と思い手帳に書いてある予定表を見たら翌日にこのホテルに泊まる事になっていました。結局交渉して泊めてもらいました。

三度目は先日、成田に帰国する時の韓国の仁川空港でした、地元中学生の帰国手続きを手伝っている内に時間がなくなり急いでアシアナ航空の7番ゲートに行き航空券を渡し機械に入れましたらはじかれました、女性従業員が機械の故障かと思って・・男子従業員を呼びました。彼が私の航空券を見て大きな声で言いました!!

「お客様!!成田行きは隣の7番ゲートです!!ここは上海行きです!!」

今後は十分ゆとりを持って・・気をつけたいと思っています。

[○月○日(仕事が無くなる!)]

 

日本の大企業からの委託生産品を中国に移管する話が現実になりました。

日本側にはいろいろの事情があるようですが開発当初から量産を立ち上げし、その後のコストダウン要求にも応えてきた韓国側は突然の移管決定に対してかなり反発しました・・しかし委託する方と委託される方では結論は決まっているのでいかに韓国側に日本の事情を説明したのでしょう・・ここは外国であるし日本の下請け企業に対応するような仕方は通用しないと思ったのですが・・・。

この商品は日本独自のもので中国へ移管しても全て日本への持ち帰りです。安く作りたい気持ちは解りますが現在では総売上の20%を占める商品の引き上げは経営的にも大きな問題です。従業員約20名、外注会社の処遇など頭の痛いことばかりです。
移管前の生産職場
中国へ移管した後の職場

他社のことなど構っていられない日本側の事情があると私自身は理解したのですが・・さてどのような対応策があるか・・韓国側の幹部やオーナーと話合い方策を考えた結果、外注先の2社削減従業員の削減など実施することにしました。国内販売が好調で推移しているのが幸いであるが多分今年の経営目標は達成できないでしょう。

[○月○日(中国ビジネス)]

 

中国市場での合弁事業の話が進んでいる、この打合せに出席する機会を利用して北京ー福州ー上海ー仁川と1週間で回ってきました。

上海は行く都度変化し近代化している様子がわかります、今回は4会社の工場を見学したあと、中国に独資で会社を3年間で黒字化した経営者の話や既にある合弁会社が黒字化し新たな合弁会社を作りその竣工式にも出席しました。中国での会社経営のいろいろを聞くことが出来たことは大きな収穫でした。
上海郊外の工業団地
工場の竣工式セレモニー

北京から福州行きの飛行機では偶然日本人と隣り合わせた、聞いてみると福州市にある福建師範大学で日本語を教えている人であった。日本では高校の教師であったそうで退職後のボランテア活動だそうです。日本語の指導教師の需要に答えるため日本側に教員退職者の支援団体があるようです。生活費は中国側もちで日本の団体からも多少の支援があるそうです。


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