廃業と起業

2003年7月

韓国の中小製造業は良く言えば小回りの利く機動的な経営です、しかし言い方を変えるなら「物作り」に拘らない利益重視の経営スタイルかもしれません。
「鶏口となるも、牛後となるなかれ」という諺があります。史記にある文章で、戦国時代、蘇秦という人が、秦国に脅かされた六つの小国に対して、「大きな牛に征服されて従属するより小さい鶏としてでも独立国でいるべし」と、お互いの結束を説いた訳です。これが現代的には、「大きな組織の中で従うよりも、小さい組織でも先頭にたって活躍するべきである」という意味になります。中国と違い島国の日本では同じようなことを「鯛の尾より鰯の頭」と言ったりします。

私が今まで経験した韓国人気質はこの諺がぴったり当てはまるようです、今の会社でTOPからの強い指示命令を受け結果が評価の全ての中で苦労するより、小さくても自分の会社を起業しそこで挑戦して見たいと思うのは人情です、問題は考えるだけで行動に移せるかどうかですが私の周囲には果敢に行動に移す韓国人が多いのです。

昨年末に退職した技術担当理事は現在は友人と携帯電話関係のプリント板の製造会社を起業しそこで数十名の会社の社長として頑張っているようです。この7年間に製造部長がパレット製造会社を、生産部長が食堂を、品質保証部長がコンサルタント業をそれぞれ起業の為退職して行きました。どちらの道が将来の展望が開けるのか解りませんが挑戦し行動する姿をみると若さと強い独立心を感じます。起業のために退職する人とは逆に事業に失敗して社長から我社の幹部になった人もいます、これらの現象は外部からは悲壮感などあまり感じられないように見えるのが不思議です。

自動車用フューズ組立てラインと商品

紙幣鑑別器組立てラインと応用機器
一方経営者側でも経営判断は大胆に決断し行動は速いのです、最近も今まで苦労してきた「自動車用ヒューズ」事業と「紙幣鑑別器」の事業を他の人に売却しました。

自動車用フューズ事業は相手が大手自動車会社系列であるので、コストダウン要求と商品サイクルの短さに中小企業の限界を感じたようです。紙幣鑑別器もソフトの開発に資金が必要なこととと競争相手の商品の方が安価で機能も上であったので価値のある内に売却しまいました。

レジャーホテル用リクライニングベットを開発し東京での展示会に出展しました。
ホテル用コンピューターシステムを開発して国内販売を始めました。
製造業にこだわりがあるならもっと積極的に資源の投入を図り市場で競争し勝利に向けても良かったのではと思いましたが、早く見切りをつけて売却し新規事業である「ホテル用のコンピューターシステム」事業と「リクライニングベット」の事業に資源の再投入をしました。

先の諺をこの会社に当てはめれば「優秀な競争相手の間に入って苦労するより、小さくとも自社が特化できる事業を新たに起しそこでトップになる」という意味につながり果敢に実行している訳ですが、私は敢えて「寧ろ牛後となれ」という意味で「非力な会社であってもより優秀な会社に食らいついて近ずく」という考えもあるのではないか、もっと製造業にこだわって技術開発力を追求すべきではないかとオーナーに話したことがあります。

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