かなしい出来事

2000年11月

今年も秋が短くすぐに寒くなってきました、田舎の町を歩くとキムジャン(キムチ作り)の風景に出くわす季節になりました。
最近おこった出来事を2つお話します。(3枚の写真は北朝鮮の金剛山風景です)

■倒産悲話
オーナー会長と副社長が事務所でコソコソ話をしていました、後で聞くと子会社の責任者の朴さんが警察につかまり刑務所に入ったとのこと。何か悪い事でもしたのか・・?

この朴さんは48歳で大手電機会社を辞めて独立し部品製造会社を10年前に創業し、一時は従業員50人ぐらいの企業に順調に発展してきたそうです。2年前に新工場の建設をしたところへあの経済危機が発生し資金繰りがつかず倒産したようです、このような悲しい話は私の周りではたくさん聞く話です。
独立→無理な拡大投資→資金繰り悪化→破綻というパターンです、負債を整理して奥さんと共に田舎にあるこの会社に勤務しました。奥さんは従業員食堂で賄いの仕事、アメリカの大学に留学させていた一人息子も帰国させソウルで働かせています。
オーナーは創業時に大企業にいたこの朴さんに大変世話になったようです、経営者としての実力もあり外国語にも堪能で特に日本語は私との技術会話も全く問題ない実力を持っていますから子会社の社長として適任です。本人と話をした時、彼は「過去の事は忘れました、これからまた出直しです」と以外に明るく話してくれましたが家族の過酷な状況を考えると胸が痛みます、しかし彼はその後も張り切って働いていた筈であったが。・・?

 その朴さんが何故また刑務所に入らねばならないのか?
わかった事は倒産して整理したと言っていたが実際は3億ウオンほどの負債が其のままになっていて夜逃げ同然で田舎に逃げてきたのが実情でした。負債の中に5千万ウオンのリースで設置した機械も売り払ってしまったらしい、このため銀行から告訴されていましたが、たまたま最近交通事故で警察に提示した運転免許書から所在が解り捕まったという次第でした。

韓国では全国民が常時IDカード(住民登録番号)を持つことが義務付けられています、なにをするにもこのカードが必要です、日本で議論されている「パライバシー」などは北朝鮮の脅威の前には問題になりません。このカードの登録NOで個人の情報はすべて解ります。

オーナーが世話になったというがこの会社としてこの金を肩代わりするような余裕も義理もない、かといって奥さんから「助けてください!」と泣かれているし子会社の経営も困る、ああ〜困ったということで相談していたのでした。 このような場合、いつもオーナーは自ら動く事はせず副社長に後のことは「お前に任したからよろしく」、といって帰ってしまいました。さあどうするか??その後のことは後ほどに。

■幕間悲話
総務部の人が走り回っていますので何だ、何だと現場に飛んでゆきましたら若い作業者が床に倒れていて、周りの人が心臓マッサージをしていました。

イヤ、ヤー、一瞬感電事故か??と思いました。そういえばこの作業者の電源ブレーカーの端子側がむき出しでカバーを掛けなさいと言っていのに・・しかしどうも電気事故ではなさそうです、4〜5人で運び出し自家用車に乗せて病院へ出発して行きました、製造部長の顔が緊張のため白くこわばっていました。数時間後病院から電話連絡があり、どうも疲労が原因らしいとのこと、この男子作業者は23歳で会社の寮に住んでいる独身者です、毎日残業、その後夜間大学に行き、毎日2〜3時間の睡眠、食事も寮でラーメンのような物ばかり食べていたようでした。
このことについて「最近の若い者は弱くなったなあ・・」と元軍人の45歳の工場長が嘆いていました。・・?本人は2日間休んで元気に出社してきました。

 韓国の学歴社会は有名ですから、高卒では大会社にはなかなか就職が出来ません、家庭の事情が悪くやる気のある者はどうしても中小企業に勤務しながらも大学卒業の肩書きを取ろうと頑張り少しでも待遇の良いところに行こうとする訳です、これが今回の騒ぎの背景なのです、母子家庭のこの若者の境遇を考えるとつい自身も経験した昔の思い出と重なりまた胸が痛みます。

さて、朴さんの話ですが・・このような状況の時、私が知っている韓国人の行動、思考は仲間が苦しんでいるとき助け合うのは当然という相互扶助の考えが強い人が多いですね。
今回も結局副社長が銀行と話を付けて、半分だけお金を会社で肩代わりし出所させる事になりました。
最近「悲しい出来事」が重なりました、日本では自分さえ良ければ他人は関係ないという人が増えていると云うニュースが出ていました、これはもっと深刻な悲しい話です。

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