2002年12月

12月に入り2003度の経営計画が決まったと思ったら17年勤務した技術担当理事(41歳)が退職するという話を聞きました、一体なぜ?!韓国会社の理事といえば日本でいう取締役ですが中小企業ですから取締役といっても幹部のサラリーマンの一人でです。彼の役職は新商品の企画から顧客への技術説明などすべて彼が取り仕切っていたし特に電子回路の能力に関しては彼の右に出る者はいませんでした。有能な人材であるが・・・・しかしいろいろ聞いてみると転社はやむを得ないようです。

社員の退職の度にいつも考えてしまうのは「社内に技術の蓄積が出来ない」「他社に情報が漏れ、開発内容などの秘密が守れない」などの弊害が出るはずですがどうにもならない現象です。しかし不思議な事にそれでも事業は上手く回転しているので私の思いは日本人的老婆心の面もあるのかも知れません。幸い今回の転職は競争会社への就職でなく独立して電子部品の製作会社を設立するそうです。

オーナーの対応は出て行く者は仕方がない変わりの人間を探せとのことでした。一般的に韓国企業の人材の流動性は従来から日本に比べ高いと言われています。特に中小企業の場合は非常に高いと思います。

カボチャの花は韓国ではホバッコといってブスの意味があります、しかし花はすべて美しいです


今回の退職は自己実現が出来そうな会社設立の話であり一年前から準備してきたようです、一般的な退職の背景を私なりに調査してみると次のような状況があります。

  • 40歳代になると自分の実力も解りこのままこの会社で一生を終わりたくない。
  • 管理職はTOPからの指示が強くいつもストレスを受けている。(これは最近の日本でも同じと思う)
  • 転職は待遇も良くなることに繋がることが多いので社会も家族も容認している。
  • 退職に対して悲壮感は全くなく、むしろ能力がある者が転職する機会とみている。
  • 会社側もある程度はこのようなことを予期していて普段からより良い人材の発掘に努めている。

日本との比較論ですが韓国の大企業で役員になった人でも平均勤続年数は17年間であるとのデータがあります。我が社ではどうでしょうか?中堅エンジニアは10年以上勤務している者もいますが製造部長職はなぜか7年間で3名変わりましたから平均勤続年数は約2年です。辞める理由はそれぞれありますが収入が良くなることが一番の理由であり、独立し小さいながらも会社設立のためもあります。

日本の中小企業も退職が多いですが転職に対する意識の差が違います。韓国では能力のある者は転職により年収も増えますから家族も賛成し社会も容認しています。欧米でも有能なエンジニアは4〜5年で転職すると言われています。私のように36年も同じ会社に勤務したのは韓国人からみれば非常に待遇が良かったか?能力がないから転職も出来なかった者?と思われるかもしれません。

先日、オーナーの紹介で履歴書をもって面接に来た人がいました。43歳で一流大学の電気工学科を卒業し大学卒業後4社ほど転職し現在プラント関係の仕事をしている人です。英語と中国語だ出来るようで現在の会社は請負制で収入が不安定であることが問題のようです。はたしてわが社の5〜6千万ウオンの年収で就職してもらえるのか会社説明と工場を見学した後に勤務することを希望して帰ったがたしてどうなるでしょう?
日本も年功序列制度が崩れはじめています。近い将来には欧米や韓国の様に転職に自己実現の前向きなメッセージが込められるような時代になるのではないでしょうか。

 



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