ヒディング監督に学ぶ

2002年9月

W杯サッカーの韓国チームは決勝リーグに進出することを当初の目標としましたが予想に反しベスト4まで勝ち進みました。勝つ為の執念と精神力、最後まで諦めない「全力投球」その戦い振りは世界から賞賛されました、韓国チームをここまで成長させたオランダ人のヒディング監督は今や韓国の英雄的存在になりました。


W杯終了後韓国ではヒディンク監督の韓国チーム大改革の成功事例を学んで、会社経営に取り入れようと注目されています。日本の管理監督者にも多くの示唆を含む内容かと思いますので紹介します。

 

  ■企業経営におけるリーダーの重要性
   

ヒディンク監督のW杯の初戦勝利が示唆する意味は、「リーダーの力量によりチームを画期的に変貌させることができる」ことを表しています。
その根拠として、ヒディンク監督が就任する1年半前の韓国チームと、W杯の韓国チームにおいて異なるのは、監督が入れ替わったということだけです。
このことから、ヒディンク監督の事例は、企業経営において、CEO及び、リーダーの役割がどれほど重要かが示された事例として参考になります(三星経済研究所)。

 
監督
CEO
目標 チームの競技力の極大化を通じた競技での勝利 企業の力量の極大化を通じた競争における勝利
戦略 作戦樹立 戦略樹立
教育 選手トレーニング 人材育成
情報 現地調査及びビデオ視聴を通じた分析 情報の収集及び活用
組織の雰囲気 勝てるという自信感を呼び起こす 強い企業文化の形成

 

 

  ヒデング監督がチームを強化変革した内容は要約すると「二つの原則」と「四つの戦略」となります、以下解説します。
  2つの原則
    1.確固たる意志と所信(Hardiness)
      コンペドリーションスカップとゴールドカップの不振による世論のヒディンク監督に対する非難の声にもかかわらず、監督自身の確固たるサッカーの哲学を確信しており、自らの意志と所信を変えずに維持していました。
また、ヒディンク監督は、周囲の言葉には、耳を傾ける謙虚な姿勢を持ちながらも、自身の経歴と勝利の経験、正確な判断にもとづいた所信にもとづいて、選手らに自信感を与えてきました。

 
「準備過程で出てくるどのような批判も受け取れる姿勢ができている。あなた方は、せっかちな気持ちでもって批判意識にとらわれているときに、私はこの6月がくることをまっていた。今、世界の有名なサッカーチームらが我々のチームをあざけわらおうと反駁する必要はない。我々は、W杯で(彼らに)見せればいいのだから」
ヒディング監督
 

 

    2.公正性(Impartiality)
     

ヒディンク監督は、選手の名声ではなく、実力と現在の状態にもとづき選手を選抜したことでも知られています。
これは、彼が外人ということもあり、韓国の社会でありがちな、地縁や、しがらみにとらわれず、公正に選手を選抜しました。実際に監督の追求するサッカースタイルに適する23人の最終エントリーの人材を抜擢するために、1年半の期間と、63人の選手がその対象となりました。

「組織に害を及ぼす人や、倫理的に問題がある人は組織のために思い切って整理しなければならない。彼の代わりに残りのメンバーらに真実な姿をみせればいい。ただし、その過程においての仕事の処理に関しては公明正大でなければならない。そのためには誰でも認められる公正な基準をつくっておき、それを守ればよい。そうすれば、残りの人は指導者を信じるようになる」

 

  4つの戦略
    1.基本の強調(Foudamentals)
      ヒディンク監督は、自律的な雰囲気を強調する中においても、厳格な原則を固守していたことでしられています。
例をあげれば、選手団が全体で動くときには、服装を統一させていました。また、食事時間も全メンバーが同じ時間に食事を食べ始めて、同じ時間に食べ終わるようにしていたといいます。そして、団体が集まったときには、携帯電話が鳴らないようにもしたといいます。こうした原則をもとに、様々な戦術を体得して、実践においては、自らがもっとも適切な判断を迅速に下せるように訓練しました。
    2.革新の追求(Innovation)
      ヒディンク監督は、枠にはまったフォーメーションを破壊し、状況に応じて伸縮性をもたせるためマルチプレーヤーの育成などを通じて、絶え間ない変革を興す創意的なサッカーを追求しています。
また、各ポジション別に2〜3人づつ選手を先発しておき、お互いに競争させるようにして、ベスト11をW杯直前の1ヶ月前まで確定しませんでした。
韓国社会では、先輩後輩の関係が厳しいのが現実ですが、水平的な文化の造成のためコミュニケーションを強調して、上下の壁をとりはらっています。監督自身言葉が通じないという短所を、選手とともに体をぶつかり合わせて克服したといいます。
    3.価値の共有(Value Sharing)
     

ヒディンク監督は、就任初期から自らの追求するサッカー「創意をベースにした考えるサッカー、攻撃サッカー」のスタイルを明確に提示して、すべての選手が、これを理解して共感できるようにしました。
また、彼自身のもつカリスマ性と親和力は、これまでの外国人監督と韓国国内のコーチや選手の間でおこっていた摩擦はなく、友好的な関係だといいます。また、選手には、非難するよりほめることにより監督に対する信頼を得たといいます。

「わたしの目標は、90分間統制できるチームをつくることだ。選手らは、ポジション別に任務を正確に把握するだけでなく、状況に応じた戦術の変化を理解できなければ、いい試合をすることはできない。現代のサッカーにおいては、選手らが(自ら)考えて、立ちはだかる問題に対して解決できる能力をそなえていなければならない」

    4.専門知識の活用(Expertise)
      ヒディンク監督自身がヨーロッパでの豊富な経験をもつ専門家として、グローバルスタンダードを投入することで、選手らのレベルアップをはかりました。その中で、戦術、技術、体力、精神力の4つの勝利のための要素を提示し、これらの要素のバランスのとれた向上のための体系的なプログラムを投入しています。
たとえば、体力強化プログラムの場合、W杯時点で、最高レベルの体力をもてるように、選手個人のコンディションと体力測定値などの細かいデータをデータベース化して管理していたことは有名です。
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