2000年6月

■最近の品質問題3題

1. 溶接作業場で使用することになっているはずの溶接電流のモニターを使っていないアジュマ(おばさん)がいました。
「なぜ使わないのか?」
「これを使うと警報がでてうるさい、4種類の部品をやるので設定が解らない」
「使用することになっているルールは知っているのか」
「知っています」
「では使用しなくて良いとなぜ判断した?」
「スタッフに何回も話したが来てくれないよ」
「来てくれなければ作業を止めなさい、なぜルールを守らない?」
「・・・・?」
2. 強度試験をすることになっている部品で組立中に破断したもの発見した、調べてみると受入検査で検査されてないことが解ったので品質課の担当者に聞いてみました。 

「なぜ受入検査をしないのか?することになっている筈だ!」
「強度試験機を校正に出して無かった、また過去強度不良が今まで無かったので後で測れば良いと思った」
「この部品の強度は重要なことは知っているのか?」
「知っています」
「では無検査と判断した理由は?課長は知っているのか?」
「・・・・?」


3. 新商品の第一ロットで製品のギャップ調整をすることになっているが不良品を測定してみると規定通りでなかった。早速、男のリーダーに聞いてみた。

「なぜ規定通り調整しないのか?」
「調整したが不良になったので再度調整した、このようにすると良品率は上ります」
「再調整をすることは決めてないのになぜ調整したのか?またなぜその時連絡しないのか?」
「再調整しないと生産が間に合わないです」
「決めたルール勝手に変更しては不良の原因追求もできない、再発防止もできないよ、勝手に判断するな」
「・・・・?」

品質の維持向上に関してはいつも教育指導しているつもりですがまだ徹底されない状況ですスタッフを集めて上記内容を具体的な事例として教育しました。

それにしてもなぜこうも勝手に判断してしまうのでしょう。韓国人は日本人より自己主張が強いといいますが、この性格が関係するのでしょうか?たまたまこの会社だけの現象なのでしょうか。悩みはつきません。

韓国の大企業に駐在するの日本技術者に話しましたら次の答えが返ってきました。彼が2年間の間に感じた会社の問題点は、

  • 結果よければそれで良しプロセスの不具合は問わない。
  • 目先の金や時間が重要でトータルコストの考えが薄い。
  • 自分の担当以外は手も口も出さないし協力もしない。
    (組織としての総合力の考えが薄い)
  • 結果が悪い時は自分以外に原因を持っていく。
    (製品に不良が出たときの原因の第一は作業者或いは他の担当者、次いで設備か材料、決して自分の計画とかやり方が悪かったとは言わない)
  • ちょっと表現が良くないですが「何でもあり」で記録の作文は当たり前。
  • 自分自身に不利益が無ければ悪い状態が分かっていても放置する。
彼は、「これでは良いところがないようですが、その一方で韓国人個人の技術、技量と設備はなかなかのものがありますから韓国製品が世界に出るのはそう難しいことではないでしょう。原因は経営トップの社員処遇にあると思います。口先だけの教育では駄目で信賞必罰、給与に反映させることが必要と思っています」という意見でした。

ウ〜ン・・これでは韓国企業全体が問題のようにも受け取れますが日本企業との相対比較でこのような表現になるのかなと思います。私はTOPの考えが「結果第一主義でプロセスは二の次」であるとの意見には同感です。これが影響しているのではないかと思います。また従業員全てが品質管理に関し経験不足でこれからの指導教育と共に自らの失敗に学ぶことで体得する筈であると確信しているのですが・・?

この原稿をアップする直前、日本の中小企業を3社ほど見学する機会がありました。従業員が30名〜50名の自動車産業の2次、3次下請け企業でしたが何処でも目視による全数検査を加工工程の中に入れていました。いずれも不良が出てから親会社の指示で全数検査工程を入れたそうです、これを見て親会社が物作りの基本を忘れ商社化しているなと感じました。
不良発生とその対策内容を見せてもらいましたが体質的には韓国と同じで日本の自動車産業も末端では大したことやってないなと感じた次第です「韓国企業は遅れている」との思い込みがあるとしたら間違っているといえるでしょう。

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