かなしい葬儀体験

2001年8月

友人の父親(85歳)が入院したと聞き直ぐにソウル第一の三星病院にお見舞いに行きました。10階の病室に入ると当人はベットから起き上がってたどたどしい日本語で挨拶を返してくれました。この年齢の韓国人は日本語教育を受けた時代に育ったのでまだ日本語を覚えているのです。退室後に友人から末期癌であと何日も生きられないと告げられました。信じられませんでしたがそれから2週間後帰らぬ旅立ちをしてしまいました。「ご冥福をお祈りします。合掌。」

三星病院全景 病院の敷地内にある葬儀場


韓国の葬儀を初めて体験しましたので紹介します、儒教と仏教の交じり合った葬式でして日本と比較し似ていて否なる葬儀でした、韓国ではキリスト教徒も多いのでこの人たちの葬儀内容はまた違うはずです。
私は亡くなった翌日の通夜に行きました、この日に香典を持って行きます、日本のように葬式の当日ではありませんでした。受付があり賻儀(プウイ)と書いた白い封筒にお金を入れて出します名前は書きますが金額は書きません、最低3万ウオン(3千円)からで会社の幹部で5千〜10万ウオンです、お返しは何もありません。韓国では一般的に日本のようにお返し文化と言われる習慣はありませんから葬式でも結婚式でもお金は出すだけです、相手に何か有ったとき助けてあければいいのです、相互扶助の精神はこのように生きています。

葬儀場の建物に入ると地下2階で25の葬儀室があります、名前の書いてある案内板を確認し地下一階の奥の8畳ぐらいの部屋があり両サイドに名前が書かれた花が飾ってあります、どうぞと案内され入ると正面に祭壇があり位牌、遺影と棺があります、前には線香がある、同行した副社長にどうするのか小声で聞くと「私はクリスチャンですから仏教式は解りません」と冷たい返事です、横に遺族が並んで日本人がどうするのかジットみているようで緊張しました。

やむをえず来る時に教えてもらった韓国式礼拝をしました、この礼拝はまず立って正面を向き正座しながら両手を前に床につけて深々と頭を手の甲に近付ける、再度立って繰り返す、最期に立ったまま軽くお辞儀をする。次に横にいる喪主にまた同じことを繰り返すがこれは一回でよい、喪主も同じ事をし後で握手をしながらお悔やみを言います、その横には家族が立ったままで並んでいるのでお悔やみの挨拶する。後で死んだ人には2回半、生きてる人には1回の拝礼をすると聞きました。喪主は黒服で頭に長い帽子をかぶり、家族の女性は白いチマ チョゴリを着てました。
韓国の香典に当たるものです、裏には氏名のみ書くだけで金額は入れません。 礼拝所は日本のより質素です。男の兄弟はすべて喪主の帽子を被っていました。
 
隣に付属している立派な休憩所です、ここに食事と飲み物が用意されています。  

  私の後からは大勢の人が続々と来てお焼香をしていました。終わった人は隣接の20〜30畳の休憩室部屋で休憩し飲食しながらしばらく話し合って帰宅しするのです。手伝いに来ていた会社の総務部長に聞いたところではここの借用費用は120万ウオン(12万円)でと1人当たり8千ウオン(800円)の食事代だそうです。3日間の葬儀にかかる費用は500万ウオン(50万円)とのことでかなり高額です。

喪主は大変です。昨晩から二晩の対応をしなければならず、今晩来る人が多くなるので祭壇の横で立ちっぱなしで対応しその都度立ったり座ったりして挨拶しなければなりません。やはり男子優先で女性は最後に並んでいます儒教の影響を感じました。

3日目の朝、出棺ですが日本のような儀式は何もありません、お坊さんが先頭に立ち遺影を持った喪主や家族が並びます、歩き出すと同時に女性達が大きな声で泣き出しました「アイゴー、アイゴー」その声の大きいことビックリです。大きな声を出して泣く事が死者に対して供養のようでして韓国では泣かなければいけないようです、日本のように悲しみを堪えむせび泣くのでなく韓国は悲しみを大声で表すのです。霊柩車に乗せる時取りすがりまた一段と大きな声で泣き声を上げました。
この葬儀場には葬儀に関するあらゆる品物を販売している売店がありました。

 
死者に着せる着物「壽衣(ジュイ)」から棺、喪主の服装一式販売していました。
棺は80万ウオン〜150万ウオンの定価が出ていました、係りの人に聞きましたら火葬の時は比較的安いもの、土葬が高くなるようです。わたしも此処で黒ネクタイ(3万ウオン=3千円)を購入しました。
売店の主人がこの写真を見せてくれました。

昔の金持ちの葬儀だそうです、たしか26名の人 が棺を担ぎその前に乗っている人が音頭を取り ながら墓場まで行進するのです、なかなか盛大 は儀式であったようです。 このころは墓場の隣にテントを張り喪主は3日間 そこで喪に服したそうです。 また3年間は喪中だったことも事実のようです。


霊柩車の後からバスで土葬の場所まで行くのですが、一旦自宅まで行きそこでお坊さんがお経をあげてから墓場に向かいます。最近政府は火葬を奨励しているので火葬する人は増えていますが最近の火葬比率は45%だそうです.伝統的な儒教の土葬習慣はなかなか一気には変わりません。
1時間ぐらいバスに乗ったところで埋葬する山に着きました、安東金氏一族の墓場だそうでここを登ってゆくと既に棺を入れる深さ2メートルの穴が掘ってありました。墓堀の人が土のかけ途中で参会者に一緒に土を固めなるよう促します、この時参加者はお金を各1万ウオンを傍の縄の間に挟み参加します、これは後でこの墓堀人の懐に入るそうです。

 
墓のある小山からみた風景
夫ををなくしたお母さんが痛々しい
 
埋葬が終わりお別れのお祈り  

ここに埋葬し小さな山にしてからその前に持ってきたお膳を置きこの上に供物を置きお坊さんの読経があります、そして最後のお別れの拝礼ですがここでも「アイゴー、アイゴー、ヨボアイゴー、アボジアイゴー、」の女達の大合唱がありました。
3日後に家族がまたここに来て供養するのだそうです。それまでに私達が他の墓で良く見るあの土饅頭のお墓に仕上げるらしいです。その後49日目にまた供養します。この日までは家族は喪に服す訳であるがこのあたりは日本と同じです。
韓国の葬儀のやり方は自由度が多いのと比べ日本の葬式のなんと堅苦しい格式ばったやり方なのかこんなところにも隣国との国民性の差を感じました。 (葬儀の写真を撮ることに抵抗感がありましたが仏になった人が85歳という年齢のためもあり友人がわざわざ写真を撮らせてくれましたことを付け加えておきます)


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