朝鮮銀行
多田井喜生著(財団法人日本総合研究所参与)[PHP研究所]¥740
2002年3月1日発行 ISBN4-569-62925-6
本書は日本の大陸進出の金融・財政面での実態を、日本が植民地にした朝鮮に設立した朝鮮銀行を通して明らかにしていきます。
日華事変が始まった昭和十二年から終戦までの東京の小売物価は二・五倍に止まった。しかし、日本軍が占領していた北京や上海では一千倍にもなった。本来、植民地である以上中央銀行業務は日本の中央銀行である日本銀行が行うべきであったが、朝鮮銀行が設立されたことで朝鮮はもとより旧満州や北京上海などでは朝鮮銀行券が流通し戦争による物価高騰を日本に波及
させずに済んだのである。やはりこの面からも日本のために韓国併合を行ったことが明瞭である。
三十六年の歴史をもつ朝鮮銀行は常に順調だったのではない。設立当初の金本位制と銀本位制の相克、第一次世界大戦後の“バブル”と、その後の世界恐慌の結果、朝鮮銀行には不良債権が急増して資産内容が急激に悪化し処理が終わるのは実に昭和十六年になってからであった。
朝鮮銀行はそのまま大韓民国に引き継がれるが、旧朝鮮銀行券が流通を止めるのは皮肉にも朝鮮戦争で北朝鮮軍が紙幣印刷原版を接収し大量の紙幣を増発このため新韓国銀行券を日本で印刷したことが契機になったという。
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