幻の三中井百貨店(朝鮮を席巻した近江商人・百貨店主の興亡)
林 廣茂 著 (大学教授・マーケティング・コンサルティング) 「株モ聲社」¥1400
2004年2月25日発行 ISBN4−89188−314−6
この三中井という百貨店がかっての京城(現在のソウル)にあったという話は聞いた事も無いし、私の知っている韓国人に聞いてもすべて知らないという、「幻の百貨店」の興亡が書かれています。
戦前に朝鮮半島から大陸にかけて三中井(みなかい)百貨店という三越にも勝った一大百貨店は当時のピーク時には従業員4000名、年間売上高は1億円(現在価値で5千億円)であったということです。
この三中井という幻の百貨店の興亡を通して「なぜ消滅したのか」を作者の専門であるマーケッテングの手法でそのナゾを解いています。敗戦により何もかも失ったのはこの百貨店だけではなく、朝鮮に進出していた全ての事業が同じ状況であった筈です。再建が出来なかった理由として日本国内に営業の拠点がなかったことや、また人材の養成を怠った同属経営の弱点が指摘されます。これにTOPの再建しようとする意志と能力がなかったようです。
この本を読むと日韓併合により、一獲千金を夢見る日本人の朝鮮への商業活動の経緯が理解できます。日本帝国主義の手先でもある日本の商人である三中井や三越が朝鮮人を搾取したという主張があります。一方商業の進出により経営の移転を通じて朝鮮に近代的小売業を育てたという意見もあります。
韓国では日本の植民地化で朝鮮自体での近代化が遅れ、朝鮮での商業活動は全て日本の為であるから
「当時朝鮮で生活した最大75万人の日本人すべてが侵略・搾取者であった」という問いかけにどう答えたらいのでしょうか。
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