半島を出よ(上・下)
村上 龍 著 (作家) [株式会社 幻冬社] 上:¥1800 下:¥1900
2005年3月25日発行 上:ISBN4−344−00759−X 下:ISBN4−344−00760−3
北朝鮮の特殊戦部隊兵士9人が開幕戦が進行中の福岡ドームを武力占拠します。
2時間後に484人の後続の特殊部隊が来て、ドーム周辺を制圧し、シーホークに本部を構えるのです。最近の北朝鮮情勢を考えるといかにも近未来の日本でいかにも起こりそうな状況設定です。 時代設定は今から7年後でその時の日本はホームレスが4倍に増え、自殺者は9万人(今は3万人)、失業率は9%(今の2倍)、若い世代の犯罪率が異様に増加し、治安悪化は著しい。特殊部隊に福岡が制圧されても、東京の政府は無為無策で、九州を切り離してテロ部隊の状況を阻止しようとするだけ。アメリカ軍がまったく出てこないところが不思議で奇妙な感じです。自衛隊の動きもなく、ただ大阪から警察の特殊部隊(SAT)がやって来て逆に全滅させられてしまうのです。
やがて、北朝鮮から12万人の軍隊が船でやって来るという緊張した状況になり、その受け入れに福岡市当局は協力します。住基ネット情報から福岡市内の金持ちが次々に重犯罪人として逮捕連行され、酷い拷問の末に財産放棄書にサインさせられます。
やがて、アナーキーな集団イシハラの仲間は多数派に組しない、人に良く思われたって、悪く思われたって、そんなこと気にしたってしょうがない、好きに生きて、それで、あえばいいし、あわなくてもいい…そんな若者がそれぞれの持つ知識を寄せ集め部隊の殲滅してしまいます。
正義や大義を振りかざさない彼らの闘いはすがすがしいがやはり現実離れしていて私には馴染めない。日本の危機管理能力を問う作品でもなさそうである。
このような分厚い本を一気に読みきった爽快感だけが残った。
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