2007年4月

 

 韓国は340万台の自動車を生産する世界の第五位の国です。しかし不思議なことにガソリン価格が高くなっているのに販売される自動車の大きさと排気量がますます大きくなっています。日本が軽自動車(排気量660cc以下)が売れているのとは極めて対照的な現象です。

 韓国でも軽乗用車は税制上の特典があります、自動車税は普通車に対し33%低いし、保険料金が20%割引です。 駐車場料金も30%〜50%の割引がありますし、高速道路料金も50%の割引など有ります。

 韓国の乗用車市場では2000tクラス以上の販売比率が下図のように20%以上に上昇しています。しかも中型車から準大型クラス現代のグレンジャーのような準大型クラスの車が、もっとも多く売れる国は、韓国が唯一ではないでしょうか。


 

アパートの駐車場にも軽自動車は無い
会社のアジュマの乗用車も軽自動車は無い

 
 私が住んでいるアパートの駐車場をみても、会社の駐車場をみても軽乗用車は一台も無いのです。この不思議な現象を会社の人に聞いてみましたら次のような返事がありました。

  1. 交通事故時の安全のため
  2. 大きいものが好きな国民性
  3. 車種が少ない、800CCでは燃費の点で差が少ない
  4. 軽乗用車=貧乏のイメージが残っている

 韓国でも比較的燃費の悪い排気量の大きい乗用車やオートマ車の販売量が多いのは、経済的観点から問題があると指摘はされています(自動車を10年間乗る市民運動連合)。この市民連合は経済性にもっと目覚めてくれたら軽乗用車も増加するはずであると考えて運動しているそうですが効果は今のところ出ていません。  
 
 現代・起亜自動車は2002年と20033年に軽自動車のアトズとビストの生産を収益性が低いという理由から中止しました。現在韓国の軽自動車(800CC以下)「マティス」を生産しているGM大宇(テウ)も、品質改善への投資をおろそかにして、数回のリコールが行われるなど、消費者の不満を買っているのです。(2006/03/20朝鮮日報)。

 韓国の自動車産業の専門家たちは、自動車市場を不況に耐えられるようにするためには、日本のように小型車の販売が多い構造に変化する必要があると指摘しています。韓国の軽乗用車比率を増やすためにはユーザー側の意識改革の問題もありますが・・私は韓国の自動車メーカー側の努力不足が一番大きな原因であると感じています。

以前乗っていたマテス(800cc)は乗り心地は悪くなかった
昨年モデルチェンジし改良されたマテスU
最近人気のある中型車・ルノー三星のSM5(2000cc)は日本車と遜色ない
 
 余談ですが・・最近感じていることです。

 家電と自動車はどちらも日本を代表する産業です。両者とも高い技術力と設備装置を整備する資金力が必要ですが、自動車の方が産業の参入障壁は高く、電機産業に比べれば競争過多には陥りにくい状況にあります。

 最近読んだ「日本電機産業再編へのシナリオ」(かんき出版 佐藤文明 著)によれば日本大手電機の最大の問題は事業環境の変化により利益が上がらなくなってもその事業から撤退する戦略が無いことである。現在の横型コングロマリットを再編し、事業部門ごとに統合した「グローバル・トップワン」と呼ぶ世界有数規模の縦型の企業組織へと変えるため・・今こそ電機産業再編へのラストチャンスであると指摘していました。

 それぞれの産業の特性による違いはあるものの、大まかに見れば、同じような競争環境にある中で、家電メーカーと自動車メーカーに差が見えている一番の要因は、産業集約化の進展の違いにあると思います。 国内の自動車会社の数は減ったわけではありませんが、マツダ、日産自動車、三菱自動車は欧米の自動車グループと資本提携を進め、日野自動車やいすゞ自動車、ダイハツ工業などはトヨタとの連携を強めています。

 しかし下記の表をみて韓国の現代自動車が世界一の市場である米国でプレゼンスを高めていますし中国などの新興国のメーカーはこれからの段階ですが・・日本の自動車産業も現状維持を続けて行けば現在の家電業界と同じ道を歩むかもしれません。

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