2006年2月

 

 日本味噌と微妙に味が違う韓国の味噌のことをハングルで「テンジャン」といいます、漢字は「甜醤」と書くところをみると中国から来たものなのでしょう。このテンジャンを作る素として「メジュ(味噌玉)」というのがあります、今でも手作りで手間ひまかけて作っています。

 昨年の立冬の頃だったと思いますが、このメジュを作っているアジュマがいるというので聞いてみたら「見せてあげるから家に来なさいよ」という話しになり、早速昼休みの時間に付近にあるアジュマの家まで見学に行きました。

 レンガ作りの二階建ての屋上に上がって見るとビニールハウスの中にメジュが吊るしてありました。来年までこの状態にして置くと青かびが発生して味噌の味が良くなりますよ、という話しでした。なるほど手作りの味が滲み込んでいるようで、これが古くからの伝統の作り方であると納得しました。

 

冬至の頃のビニール内のメジュ
山菜も干してあった
 

 

 説明によれば「豆を一晩水に漬けて膨らませてから、茹であげ、臼に移し大豆の形が完全にはなくならないつぶします。一定の大きさにして乾かし、藁で結わえ、表面にカビが生えるまで冬の間暖かい部屋に吊り下げ、早春の晴れた日に外に出し乾かします」このような手の掛かる過程を経てはじめて、メジュは各種ジャン類の材料として使うことができるのです。

 これはそのまま食するものではありませんが、韓国の基本調味料であるカンジャン(醤油)、テンジャン(味噌)、コチュジャン(唐辛子味噌)などはこのメジュ無しでは成り立ちません。韓国特有の食品で古代の時代からあったようで、韓国人の食生活に欠かせないものとして存在し続けています。


アジュマが持ってきててくれた
完成したメジュには青かびが付いている
 

 

 2月の中旬、仕事が始まる前に私の部屋にアジュマが入って来て・・「顧問さん!メジュが出来たよ!」といってカバンから黒いビニール袋を取り出しました。袋の中から出てきたのがメジュでした、なるほど「青かび」が付いて、持ってみるとカチカチに硬くなっています。

「これからどうしてテンジャンになるの?」

「これをつぶしてカメにいれ、ここに水と塩をいれ、殺菌と匂いを消すために木炭をいれて熟成させると・・黒い上澄み液ができるので、これがカンジャン(醤油)になります」

「なるほど・・それで味噌の方は・・?」

「簡単に言えば残ったメジュを毎日太陽の光を当てて長い時間熟成すると味噌になるんです」

「珍しいものを見せてくれてありがとう・・!後でこの味噌で味噌汁を作ってご馳走してくださいよ」と頼んだが・・メジュに興味をもった日本人に見せたいと思って持ってわざわざ持ってきてくれたアジュマに感謝です。


賄いのアジュマのテンジャンは味が良い
朝飯のテンジャンは定番


 

 形態は変わってきているとはいえ、メジュが韓国料理に必須なものとして作り続けられることは間違いないことでしょう。昔の方法は自然の恵みではぐくまれた健康食品です、米麹や麦麹を使う日本の味噌とは甘みが少なく微妙に違います、独特の香りとうまみと塩味で奥行きのある味がとても気に入っています。

 ご飯を食べる時は味噌汁と一緒に食べるのは日本と一緒です。しかし日本では行儀が悪いと言われそうですが韓国では味噌汁の中にご飯を入混ぜて食べるのは良く見かけます。私もいつも混ぜて食べるのが習慣になっています。毎朝、この味噌汁とご飯を食べていますが古来からの食べ物は飽きが来ないですね。


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