2006/7


  雨季に入ってうっとうしい季節です。雨の日は庭の草むしりも出来ないのでもっぱら読書です。  


36人の日本人 韓国・朝鮮へのまなざし

館野 哲 著 (自由寄稿家・韓国語翻訳家) 「竃セ石書店」¥2000
2005年2月10日発行  ISBN4−7503−2053−6

20世紀の日本と朝鮮(韓国)との関係の知られざる歴史や朝鮮に関わった36名の日本人の諸相を再発見できました。現在の視点で善玉、悪玉としての人物像を考えてもあまり意味が無いですが当時でも「朝鮮と朝鮮人を愛し、あるべき日本と朝鮮を考えて行動した人物」がたくさん居たことを知りました。

南次郎、与謝野鉄幹、石川啄木、湯浅克衛など朝鮮の文化を愛した人が居たかと思えば反対に朝鮮併合時代、朝鮮の膨大な文化遺産を集めた小倉武之助も居ます。小倉武之助の所行は売買としての収集結果であるとはいえ収集された朝鮮の文化遺産は日本で所有するよりも今後は返還して韓国で展示すべきであるのではないかと私は思いました。

過去の人物の善悪を考えても意味が無いと思っいましたが当時の時代背景でも「相手の立場に立って考え行動した」人物を知る事は今後の生き方を考える上で大切なことです。また朝鮮蔑視感や差別意識がどうして生まれたのか日本人の朝鮮観の深層意識をもっと探りたい気がしました。



近世の日本と朝鮮

三宅英利 著 (九州大学名誉教授)  「「株式会社講談社}¥1100
2006年2月10日    ISBN4−06−159751−5

豊臣秀吉の文禄・慶長の役で断たれた日朝関係修復交渉の基本には家康の「和好」の精神がありました。この江戸時代こそが二千年に及ぶ日本と朝鮮との交流の中で、両国の平和がもっとも保たれ、友好的だったいう見解などが述べられています。また日本における当時の朝鮮観や朝鮮官民の日本観などの記述を興味深く読みました。

国交再開後十二回もの朝鮮通信使や対島藩の倭館貿易…。東アジアの国際関係を視野に入れつつ、鎖国下の日朝関係が解説されていますが、現在の日韓関係にも通じる部分があると感じました。

 


写真で読む 僕の見た「大日本帝国」

西牟田 靖 著 (ライター)  [鰹報センター出版局] ¥1600
2005年2月25日発行    ISBN4−7958−3123−8

”僕の見た「大日本帝国」”の続編です。著者は前作を発表してから多くの人々からの反響があり、まだ自分に出来る事があるのではないかと思い今回の未公開写真400点以上掲載し前著を補完するものとしてこれを纏めました。

明治の半ばから昭和20年の終戦前後まで「大日本帝国」と称していた日本の統治下に置かれていた地域「サハリン(樺太)の南半分、台湾、韓国、北朝鮮、ミクロネシア(旧南洋群島)、中国東北部(旧満州)」の見た事もない「大日本帝国」の残像に光を当てています。

戦後半世紀以上たったが現在でもそれらの地域には、日本語、日本建築、鳥居、神社、日本精神、残された日本人…とさまざまな形の痕跡が残っている事が解ります。

著者は無節操な反省や謝罪意識をもたずに、日本の負の部分をつきつけらた時も、それを素直に受入れ驚いたり喜んだり、時に怒りや無力感、脱力感を感じた内容が淡々と語られています。
言葉だけでは真実を知ることは難しいのです、画像と共に赤裸に語られる現地の人の言葉の中に教わらなかった歴史が浮かび上がってきます。若い人にも読んでもらいたい歴史の真実を語っている本です。


朝鮮半島をどうみるか

木村 幹 著(神戸大学大学院国際協力研究科教授) [鰹W英社] ¥680
2004年5月1日発行  ISBN4−08−720241−0

この本を読んでいる時に北朝鮮のミサイル発射で日本国内では連日ニュース報道されている時でした。
著者は「贖罪史観」でも「修正史観」でもない第三の視点からの朝鮮半島研究を目指しているようです。

朝鮮半島情勢に関する日本の専門家や政治家の話は、同じ問題について相反する見解が存在し、両者の見解は決して交わることが無いが興味深いのは、何故日本統治時代の朝鮮半島の人々の暮らしぶり について同じ統計資料を参照しながら、「日本による圧制」と「李朝社会よりはるかにマシ」という評価が生まれるのかについて、冷静に分析しています。韓国と北朝鮮を含めた朝鮮半島を他国との客観的な比較による分析がされていることも参考になりました。

特に私達にとって朝鮮半島との関係が断ち切れないなら出来る事はただ一つ、彼らがどんな人々なのかを知るために、試行錯誤を続けるしかありません。朝鮮半島について「学ぶ」ことは、他人の人生について「学ぶ」 こと、結局は人間について「学ぶ」ことなのだと締めくくっています。 研究者とそこへ訪れた学生との会話という形式で記述されておりわかりやすい内容になっています。



つきあいきれない韓国人

渡部 昌平 著 (元韓国日本大使館(厚生労働担当)書記官) [中央公論新社] ¥700
2006年3月10発行   ISBN4−12−150209−4


著者は在韓国日本大使館の書記官として2002年1月から約3年2ヶ月間勤務されてその間の韓国人との付き合いの経験を「理解できない韓国」「つきあいきれない韓国人」としてまとめ、なぜ韓国はそういうふうになっているのかを説明しています。

私自身もこの本を読みながら、思い当たることがありつい「にやにや」しながら読み進みました。ただ表題だけで嫌韓図書と勘違いして欲しくない内容で「韓国人を本当に理解せずに表面的につきあおうとしても、結局は良い交流にならない」となっています。

この本は、韓国で幅広い層と出会った筆者が、筆者の経験した「理解できない韓国」「つきあいきれない韓国人」をみなさんにお伝えした上で、なぜ韓国はそういうふうになっているのかを、個人的見解により説明するために 書いたものです。人づきあいから交渉スタイルまで、日韓の間に立ちはだかる「壁」。それはどういう文化背景 から生れたのか韓流でもない嫌韓流でもない「真実」を語っています。これから韓国・韓国人と付き合う人には 読んで貰いたい内容です。


 





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