韓国の中小企業に3年間勤務して感じた事                                                       

2016年12月
入社のいきさつ

 日本の大手製造会社に37年間勤め、定年前に早期退職をしました。その後はいくつかのパートの仕事も経験しながら4年が経過しました。その間に両親を天国に送り出し、還暦も過ぎました。

 求職活動中のある日、突然電話があり「韓国の会社で働いてみないか?」と20年以上日韓企業の橋渡しをしている働いている知人からの勧めであった。現役時代に何度か出張訪問したことのある会社でしたが、4年間も技術的業務を離れていたことや言葉が通じないという心配もありました。
しかし、それ以上に何か気持ちがワクワクするものを感じました。そこで私は、韓国での生活を楽しみながら仕事をしようと思い、毎月韓国に行って働くことを決めました。

 

 韓国の会社は、私を技術顧問として温かく迎えてくれました。従業員160名の中小企業で韓国人と一緒に3年間仕事をしていろいろ体験しました。日本人の働く職場と韓国人の働く職場の違いという見方で感じたことをいくつか述べてみたいと思います。


韓国に住んで感じた事
  会社のイメージ
 勤務した会社を一言で表すならば、「会長(オーナー)の個人経営会社」ということである。会社幹部も従業員も、常に会長の一挙手一投足を注視している。会長には絶対の権限があるので会長からの指示に、反対意見を持っていても、直接言う人はいない、いや殆どいないような気がする。反対意見を言う人や、指示に従わない人は会社を去って行っている、ほとんどの社員はそれが当然と思っているようである。

 逆に言えば、会長の指示さえあれば、即行動に移れるので、商品開発などは非常に短い期間で業務が完了する。日本の大会社のように、複数の関連部門の合意のために必要な資料作成や説明に時間はかける必要はない。スピードは早いが成果(売上げや利益の達成)までに時間がかかるという別の問題は残っている。

 多額の投資を要する課題に着手する場合は、オーナーの指示の方向が正しければ良い結果を生むが、悪ければ最悪になる。責任はオーナー自身になる。

 トップダウン経営を実行している会長の業務体験は非常に豊富でグローバルであり国からの支援なども積極的に活用出来るようだ。常に変革しよう、新しいことに挑戦しようと社員全員に対しても熱く語ります。会長の夢や希望は大きく、感動するものがあります。
組織の実力
 会長であるオーナーがら直接会社を経営する社長を外部から引っ張ってくるが現実は会長も直接指示を出すのでどうしても重複する時が問題である。部門長やリーダークラスの異動は多く、会社の組織は頻繁に変更される。また、各部門の責任者とその責任範囲が不明確なこともあり、実質的な業務範囲は組織表よりも広いことも狭いこともあるのが実態である。部門間に壁を作る人もいれば、幅広い情報収集を望む人もいる。常に人材不足のためなのか一人で二つの部門を兼任する部門長もいます。

 また、意見の内容よりも、声の大きい人の方に進むこともある。このようなことから、組織変更にともなう業務の引継ぎや関連部門間の情報共有化を難しくしている。組織的な結集による力よりも、一人ひとりの能力に頼ることが多くなる。これが組織プレーより個人プレーが得意のように感じてしまう。

 結局、会社として成果を早く出すためには、時間をかけて会社内部の個人の能力を磨いていくよりも、外部の優秀な能力ある人の力を利用した方が、結果は早く出て合理的と考えるようだ。

部門長の仕事のやり方
 次に会社の幹部や各部門のリーダークラスの人達と仕事を通じて感じたことです。組織上の幹部役員は割りと頻繁に会長との会合をもっている。しかし、その内容は各部門のリーダークラスにまで知らされない、または指示だけでその理由は不明確だったりする。情報の共有化が不十分と感じます。ISO規格による社内規定はありますが、一部は不明確で守られていない。

 人材不足等でできない、またはやろうとしない。特に新商品開発の企画段階でそれを強く感じる。大手メーカーを手本にした社内規定は良いのだが、自社に合わせて、具体的な内容まで改善していない。開発はともかくスタートを早くして、失敗したら改善すれば良い・・という考え方も分からないわけではないが、現実は多くの時間と二重の投資を発生させていると思う。

 部門長が会社幹部に対して自由に改善提案ができるればよいのだが、トップが聞く耳をどこまでもてるかがカギだ。また、部門長は個性が強い人が多いせいか、馬が合う、合わないという問題があり、それも部門間の情報伝達の妨げになっている。しかし日本企業でも水面下で、同様なことがある。

現場アジュマの力
 製品の組立現場で10年以上働いているアジュマ(婦人)の素早い作業や、班長の書いた文章を見ても、自分が担当する仕事に対する責任感は強いものを感じた。仕事上でのやりがいは目標の納期を達成できた時とも書いていた。顧客で不具合が発生した時には、絶対に顧客に品質の悪いものは出さないという気持ちから、特別に検査作業を追加していた。しかし、本来追加が必要かどうかを判断すべき品質保証部門の実力不足がある。

 現場ではベテランのおばさん社員が多く、自分の担当業務には誇りをもって日々働いている。給料が安いことに不満はあるようだが、それ以上に、同じ会社の仲間達とのコミュニケーションを大事にしているから仲間と一緒に山登りやお酒やカラオケ好きで、それで日頃のストレスは解消されるように感じた。

 

    

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